So-net無料ブログ作成
検索選択

【Dolly Luster】 Chapter:3 ラスター子爵の可愛い弟君 《2》 [小説 : Dolly Luster]




■ 普段の世界観とは違う、ファンタジー風の世界が舞台の長編連載物です。
登場キャラはいつものDollyShadow組ですが、普段の設定とは異なるパラレル設定になっています。

前回 → 「Chapter:3 ラスター子爵の可愛い弟君 《1》」
初回 → 「Chapter:1 宵闇の島の魔法使い《1》」

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 濡れた頬の冷たさに、アヤセは目を覚ました。
 石造りの天井が、ぼんやりと霞んで見える。
 そこは、とても薄暗いところだった。ただ視界の隅の方に、微かな光が滲んでいるだけ。
 枕に頭を沈めたまま、アヤセはただ瞬きを繰り返す。
 長い睫の端から、透明な雫がぽろりと零れた。
 それは頬を伝い落ち、枕に染み込んで消えていく。ぽろりと零れては、消えていく。その、繰り返し。
 無意識のまま、アヤセはごしごしと目を擦った。
 溢れ出す雫が、やっと止まる。
 ぼんやりと滲んでいた世界が、次第に、輪郭を取り戻していく。
「………ん……」
 小さく身を震わせて、アヤセは毛布をキュッと握りしめた。
 そしてまた、くたりと身体の力を抜く。
 シーツの上に手を落とすと、寝乱れた髪が指に絡みついた。
 少し、湿っている。
 こういうのは、よくあることだった。目が覚めたら、頬や髪がぐっしょりと濡れていることは。
 だから、アヤセは思った。
 ああ、またか、と。
 ただそれだけを思って、アヤセはもぞもぞとベッドの上に身を起こした。
「……………」
 まだぼやけた目を擦り、辺りを見回す。
 そこは、石造りの小さな部屋だった。
 朝だというのに辺りは薄暗く、小さな窓から朝日が微かに滲み入るだけ。その窓枠の上には、質素な銅の十字架が掲げられている。
 教会の奥にある、修道院の一室。
 大部屋で暮らす修道士たちとは違い、貴族の出身であるアヤセには、小さいながらも個室が与えられていた。
 四方を囲むのは、灰色をした石造りの壁。窓も小さなものがひとつあるだけで、ろくに陽も入らない。まるで、牢獄のような部屋だ。
 だけど、アヤセにとっては、ここはとても住み慣れた場所だった。
 むしろ、お屋敷の自分の部屋よりもずっと。
 教会に放り込まれた十歳の時から、この八年間。アヤセは、この小さな部屋でほとんどの時を暮らしてきた。
 最初の頃は、あまりの暗さと窮屈さに泣いたこともあったけど…… それも、すぐに慣れた。
 屋敷なんかにいて、要らない者扱いされるよりは、ここの方がずっとマシだ。
「………ぅ……」
 未だ重たい頭を振って、アヤセはのろのろとベッドから下りる。
 鏡を覗いてみると、我ながら酷い顔だった。
 目は真っ赤。顔はぐしょぐしょに濡れて、湿った髪の毛がくっついている。その上、右の頬に貼られた絆創膏が、ますます憐れさを醸し出していた。
 昨日、兄に打たれた右頬。
 赤みも和らぎ、腫れもおさまってきた。それなのに、まだ…… 時折、ジンジンと疼く。
 ぐっしょり濡れた絆創膏ごと、アヤセは頬を押さえた。
 また目の奥が熱くなりそうなのを、ぐっと息を飲んで、堪える。
「……くそ…っ……」
 アヤセは水差しを掴み、洗面器の中に中身を全部ぶちまけた。
 そして、バシャバシャと乱暴に顔を洗う。
 冷たい水を何度も顔に打ち付け、息苦しさに小さく喘いで。手探りで取ったタオルで掻き回すように拭く。
「ん……」
 そうして、顔を上げると。
 鏡の中にはやっと、凛々しいクロメ少年の姿が映し出された。
 だけど、それでも惨めさは消えない。
 右頬に貼られた白い絆創膏が、痛々しくて。
 背後に映る牢獄のような風景が、ますます、憐れで。
「…………っ…う………」
 昨日。
 兄から謹慎を言い渡されたアヤセは、真田に付き添われて教会へと戻された。
 真田が、兄の代わりに詳細を告げる。
 謹慎処分。
 期間は、当主である千紗がもう良いと言うまで。
 その間は、教会の敷地から一歩も外へ出てはいけない。
 面会があった場合も、真田以外には、決して応じてはならない。
 そして、子爵家への立ち入りは、一切禁止とする。
 以上。
 項垂れて処分を聞くアヤセに、真田は、必要以上の言葉をかけてはくれなかった。
 ただ処分の内容を伝え、絶対に守るようにと念を押して、屋敷へ戻っていってしまった。
 説明は、何もない。
 どうして、謹慎なんかさせられなきゃいけないのか。誰も教えてくれない。
 理由が、わからない。
 わけが、わからない。
「………っ…… 畜生………!」
 見ているのに耐えきれなくなって、アヤセは夢中で鏡から顔を背けた。
 両手で顔を覆い、どさりと椅子に身を投げる。
 何なんだ。
 何なんだ。何で、こんな思いをしなきゃいけないんだ。
 昨日の記憶が、頭の中をぐるぐると回る。兄の怖い顔が。頬を打たれた、あの時の痛みが。
 どうして。
 オレは、何か間違ったことを言ったのだろうか。
 あんなに具合が悪そうな兄は、初めて見た。だから、心配してやったのに。
 子爵家の状況が苦しいことは、自分だって知っている。だから、自分にも手伝えることがあるんじゃないかと、ただ思っただけなのに。
 それなのに。
 それなのに、兄の仕打ちは…… これ?
 濡れた湿布の下が、ジリジリと熱い。
 もう赤みも腫れも引いたのに。まるで、打たれたばかりみたいに、痛い。
「……ぅ…… うぅ…っ……」
 疼く頬を押さえて、アヤセは身を震わせる。
 乾いたばかりの瞼に、また熱い雫が滲んでいく。
 どうして。
 どうして、こんな。
 そんなにも、オレは邪魔なのだろうか。
 オレが何か言うことさえ。目の前にいることさえ。チサ兄にとっては、鬱陶しくてたまらないのだろうか。
 教会から、一歩も出したくないほど。
 兄の支配する子爵家へ、絶対に近付けたくないと思うほど。
 そんなにも、オレは……
 チサ兄にとってオレは、そんなに、要らない存在?
「……畜生…っ…… チサ兄なんか…… チサ兄なんかぁぁ…っ……」
 まるで幼子が駄々をこねるように、アヤセは泣きじゃくる。
 打たれた頬を押さえて、泣きじゃくる。
 どうしてこんなに悲しいのだろう。
 どうしてこんなに、胸が張り裂けそうなのだろう。
 石造りの壁に囲まれた、薄暗い部屋で。アヤセは、独り肩を震わせた。
 その小さな窓に、明るい陽射しが降り注ぐことはなかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
            《3》へ続く
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
■ マイペースに連載物の8回目でした。
今回はちょっと短くなってしまいましたが、ここで切らないとキリが悪いもので……^^;
前回はアヤセの思い出話で、今回からまた時間軸が戻っています。
兄千紗の理不尽な仕打ちにショックを受けるアヤセ。このまま兄弟はすれ違ったままなのか……!
ということで、次回に続きます^^
またお付き合いいただければ嬉しいですー!


■ さて、リヴでもクリスマスイベントが始まりましたね。
手紙を置くとサンタさんが来るっていうの、面白いー^^ ヤミの方の手紙はちょっと保留中ですが、普通に合成でもらえる方はやってきました。
合成イベントは、正直あんまり好きじゃないんですけども…… 今回はそんなに面倒じゃないので助かりました^^
それに、もらえるものがターキーですしね!
というのも、ウォームのクゼさんはトリ肉が大好きなのです。これは頑張るしかない(`・ω・´*)



「さ、さぁ、早く頂こうじゃないか。じゅる……」


ターキーの島! そしてテーブルにもターキー!!(笑)
肉類があんまり得意じゃない飼い主的には「うっ;」って感じですが、こ、これでクゼさんが喜んでくれるのならば……!>< ←親バカ
クゼさんはもふもふに見えて一応神父様なんですけど、肉食系神父なのでお肉が大好きなんです。実は。
中でもトリ肉が一番好き。
ターキーの島が出たのは昨年でしたっけ? その時も「クゼさんの為の島来た!」と思いましたけど、まさかターキーのアイテムも来るなんて……!
湯気も一緒に設置して、焼きたてほっかほか。
クゼさん、良かったね~^^*
 
 



■ そうそう、先日サイトの方を更新しました。
ブログの方で書いた小話を何点かUPしています。
今まで書いたギリヴ小説のほとんどを載せているのですが…… かなりの数になって来ました。
我ながら良く書いたなぁ、と。
(それと、最近ツイッターの方で盛り上がっているチェス擬のコンテンツも作っていたりします……)
よろしければ、サイトの方にも足を運んでみて下さいませ~^^
→ webサイト「Dolly Shadow」へ






web拍手
nice!(19) 
共通テーマ:LivlyIsland

nice! 19

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。

×

この広告は1年以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。